世界一有名な“波の絵”はどう生まれどう広まった?「北斎グレートウェーブ・インパクト」すみだ北斎美術館で開催

日本はもちろん、世界中で知られている葛飾北斎の波の絵、と言えば、「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」でしょう。東京・墨田区のすみだ北斎美術館では、「グレートウェーブ」の通称で親しまれるこの作品が主役の特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―」が始まりました。 【写真】「洋風風景版画」も手がけていた北斎。漢字の横書きや西洋の遠近法や陰影法の表現もみられる

7月3日、20年ぶりに登場する新しい千円札の図柄に採用されたことを記念した本展は、作品が誕生した背景から、図柄がどのように広がって現代まで長く愛されてきたのか、歴史をたどりながら名作の魅力を知ることのできる展覧会です。

■70代で“グレートウェーブ”を描くまでの北斎は? 数え年で19歳の頃から絵師として活躍していた北斎ですが、「富嶽三十六景」を描いたのは、なんと70代のことでした。第1章と第2章では、ひたすら絵師としての腕を磨き続けること50年、北斎が名作を生み出すまでに、どんな作品から影響を受け、何を描いてきたのか、を紹介しています。

北斎が生きた江戸時代というと鎖国のイメージが強いですが、実際はオランダやポルトガルなどから絵画や書物などが、中国からは生糸や香木などが、長崎などを窓口にして輸入されていました。 北斎は20代の頃から、「浮絵(うきえ)」と呼ばれる、遠近感を強調した浮世絵を数多く描きました。「浮絵」は、それまでの日本の絵画にはなかった、西洋の透視図法(線遠近法)を取り入れた描き方のことで、こちらの作品では遠近法に加えて、中国風の竜宮城も登場。新しい表現にも積極的にチャレンジした若き北斎の姿が目に浮かびます。

北斎が40代頃に描いたとみられる「賀奈川沖本杢之図(かながわおきほんもくのず)」には、驚くことに「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」のような大波と、それに翻弄される船の姿がすでに描かれています。 この時期の北斎は、「洋風風景版画」とよばれる風景画を手がけていました。題名を漢字で横書きして入れていたり、西洋の遠近法や陰影法も取り入れて表現していることが読み取れます。また、作品をぐるっと囲むように描かれた赤い枠線には、アルファベットのような白抜き文字があしらわれていますが、これは「蘭字枠」という西洋画を意識した図柄で、本展で展示された他の作品にも見られる手法です。

■“バズった”北斎のグレートウェーブは現代でも大人気 第3章の前半では、「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」が同時代の絵師や門人たちにどれほど絶大な影響を与えたのか、を、歌川広重や歌川国芳月岡芳年らが手がけた大波の浮世絵などを中心に展示・紹介しています。 まさに現代で言う“バズった”北斎の作品は、あっという間に数多くの浮世絵師がオマージュ作品を手がけて、広く拡散していきました。

その人気とインパクトは、現代の私たちの日常でも、さまざまな商品に使われています。第3章の後半は「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」をデザインにあしらった貨幣や切手、メディコム・トイのBE@RBRICK(ベアブリック)やレゴ🄬といったコレクターズアイテム、ポテトチップスやビールのパッケージなど、幅広いアイテム33点がずらっと展示されています。 子どもの頃に自宅で見かけたり、実際に持っていた! なんてものを探してみるのも楽しいかもしれませんね。

■新千円札発行当日のイベントやミュージアムグッズにも注目 美術館のエントランスすぐのところにあるミュージアムショップでは、展覧会の図録(税込2,600円)や、「神奈川沖浪裏」にまつわる美術館オリジナルのアイテムや、会期に合わせてセレクトされたアイテムなどが購入できるそう。プレゼントにも良さそうですね。

また、展覧会の会期中であり、新千円札の発行開始当日でもある7月3日には、1日限りの無料記念イベント「新千円札発行記念 浪裏まつり」を10~16時半に開催予定です。新千円札を掲げて、浪裏作品の中で記念写真が撮影できるフォトスポットや、本展にも展示されている、カルビー「堅あげポテト うすしお味~浪裏パッケージ~」を先着200名にプレゼントするほか、木版画や江戸切子の作品の販売、カフェコーナーの営業なども予定されています。

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