新緑が気持ちいい季節ですね。
ハイキングなどに行かれる方も多いのではないでしょうか。
今回は、山を描いた素敵な絵を紹介します。

作者のパウル・クレー(1879〜1840)はスイス出身の画家です。
この作品もスイスにある実在の山を描いたものです。
クレーの魅力はいろいろありますが、その一つが美しい色使い。
中でもこの作品は色彩の素晴らしさが際立っているように思います。
色の対比とバリエーション
画面の上部を占めるのは、山と空の美しい青。
その下には、赤や緑の四角形に、黄色い地面などが配されています。
この青と暖色の対比が美しすぎる…!
画面の上下で反対色を置くことで、お互いの色が引き立っています。
画面下半分のカラフル&ポップな色合いに対し、
上半分は落ち着いた青が占めていて、派手すぎないのが心地いいです。
色のバリエーションも素晴らしく、四角形を中心に様々な色が使われています。
さらに青い山や空にも繊細な濃淡が!
よく見ると青の他にも紫などもあり、深みのある色合いになっています。

一つひとつの色をじっくり見るのも楽しいです!
単純なのに説得力大
画面は主に三角と四角で構成されていて、一見、抽象的な模様のよう。
(ちなみに実物のニーゼン山もピラミッドのような綺麗な三角形だそうです。)
それでも実在する山の風景として説得力があるのは、色使いが工夫されているからでしょう。
どういうことかというと…
遠近法の原則で
「青いものは遠くに、暖色は近くに見える」
というのがあります。
つまりこの作品でいうと
青いニーゼン山は奥に、赤やオレンジの四角や黄色っぽい地面は手前に見えます。

そのため絵に奥行きが出ていて、リアルな風景を見ているかのような感覚になります。
単純な形に遠近感を生み出す表現力がすごいです。
イマジネーションが広がる
クレーの絵の多くは、完全な抽象画でもなければ、本物そっくりな写実描写とも違います。(今回の作品もそうですね)
この具象と抽象のバランスが絶妙なんです!
何を描いているか分かるような分からないようなところが、鑑賞者の想像力を掻き立てます。
たとえば私はこの作品を見ると
この緑の四角は樹木の緑かな、この赤いのはもしかして鳥では、それとも花かしら、など自然と想像を巡らせてしまいます。
もちろんクレーは具体的な事物を想定して描いたのではないと思いますが
鑑賞者が自由に想像できる余地があるところも楽しいです。