東京、この春行くべき浮世絵展

浮世絵」は江戸時代に発展した絵画様式のひとつで、庶民の暮らしを描いた絵として始まったといわれています。そんな浮世絵の展覧会が今年も花盛り。この春は、趣向を凝らした展示が多数開催されます。ぜひ足を運んでみてください。

HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO Photo: Kisa Toyoshima

 「東急プラザ渋谷」(の3階で、葛飾北斎の浮世絵を全身で感じる新感覚イマーシブエンターテイメント「HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO」が開催されています。期間は2025年6月1日まで。北斎が生きた江戸の浮世にタイムスリップしたような、「映像×サウンド×触覚」の圧倒的な没入体験が待っています。

 本展は、誰もが一度は見たことがある北斎の作品を、超高精細イメージデータを使用し、臨場感のある高精細な映像をリアルに再現。さらに、床が水たまりや砂浜に変わったかのように感じさせる触覚提示技術などの演出により、北斎が見た景色や歩いた感覚を味わえます。

 北斎の世界へ全身でダイブしてみてはいかがでしょう。

「浮世絵現代」福田美蘭《2012年の雪月花》2012年

 次に紹介するのは「浮世絵現代」。4月22日から6月15日まで、「東京国立博物館」で開催されます。総勢85人のアーティストたちの木版画を通じて、現代から未来に続く伝統の可能性を追求しました。伝統木版画の表現に魅了されたさまざまなジャンルのアーティスト 、デザイナー、クリエーターたちが、現代の絵師となり、アダチ版画研究所の彫師・摺師(すりし)たちと協働して制作した「現代の浮世絵」が堪能できます。

 日本の木版画の技術は、江戸時代に独自に発展し、浮世絵という力強く華やかな芸術を生み出しました。「浮世」という言葉には「当世風の」という意味があり、浮世絵版画はまさにその時代と社会を色鮮やかに映し出すメディアでした。

 本展の参加作家は、水木しげる、安野モヨコ、石ノ森章太郎、粟津潔、佐藤晃一、田中一光、和田誠、草間彌生、横尾忠則、田名網敬一、加藤泉、塩田千春、名和晃平、李禹煥、福田美蘭といった、名だたるアーティストやクリエーターが名を連ねます。

 唯一無二の現代の浮世絵世界を、心ゆくまで楽しみましょう。

重要文化財「市川鰕蔵の竹村定之進」東洲斎写楽筆、大判錦絵、寛政6年(1794)、東京国立博物館蔵、後期:5/20~6/15

 また、東京国立博物館では、特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」も同時開催。江戸時代の傑出した出版業者である蔦屋重三郎(1750~1797年)の全体像約250作品を紹介しながら、天明・寛政期(1781~1801年)を中心に江戸の多彩な文化を紹介します。

 多彩な出版活動を通し、人々が楽しむものを追い求め続けた重三郎は、喜多川歌麿、東洲斎写楽などの名だたる浮世絵師を世に出したことで知られています。また、黄表紙や洒落本(しゃれぼん)といった文芸のジャンルでも流行を取り入れ、 数々のベストセラー作品を生み出しました。

 本展では、浮世絵黄金期と呼ばれる18世紀末の浮世絵界を代表する名品が一堂に集合。また、重三郎を主人公とした2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」とも連携し、江戸の街にタイムトリップしたような空間を再現しています。

 本展を通して、重三郎が創出した価値観や芸術性を感じてください。

 「東京、この春行くべき浮世絵展」では、さらにアート展示を紹介しています。是非チェックしてみてください。

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