三菱一号館美術館がいよいよ11月23日に再開館 ロートレックとソフィ・カルの競演で新たなる幕を開ける

アート

24/11/11(月) 11:30

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《メイ・ミルトン》、1895年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵

2010年4月の開館以降、40本の企画展を開催してきた東京・丸の内の三菱一号館美術館。2023年4月から設備メンテナンスのために休館していた同館が、コレクションを代表するトゥールーズ=ロートレックの作品群と、現代フランスを代表するアーティストのソフィ・カルの作品を紹介する再開館記念展を、11月23日(土)から2025年1月26日(日)まで開催する。

主に19世紀後半から20世紀前半の近代美術をテーマに企画展を開催してきた同館だが、美術館とは、時代の変化に応じて常にその活動を見直す必要があるとの考えから、現代美術家との協働にも取り組んでいる。今年、高松宮殿下記念世界文化賞の受賞が話題となったカルの招聘は、実は2020年の開館10周年記念展のために予定されていたという。だが、世界的な感染症の蔓延により、プロジェクトは延期。今回は、そのカルを招いての待望の展覧会となる。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《エルドラド、アリスティド・ブリュアン》、1892年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵

展覧会名にある「不在」は、カルが提案したテーマだ。1953年にパリで生まれたカルは、自身と家族や恋人、あるいは他者との関わりを、写真や映像とテキストを組み合わせて作品化してきた。「不在」や「喪失」についての考察を自身の重要なテーマとしている。一方、同館のコレクションの核をなすロートレックは、1864年に伯爵家に生まれ、パリの街を舞台に活躍し、ポスターを芸術へと高めた画家。そのロートレックは、「不在」と表裏一体の関係にある「存在」について、「人間だけが存在する。風景は添え物に過ぎないし、それ以上のものではない」という興味深い言葉を残しており、その言葉通り、生涯にわたって人間を凝視し、その心理にまで踏み込んで「存在」それ自体に迫る作品を描き続けた。とはいえ、その彼が描いた人々も今では「不在」となり、作品のみが「存在」するとも言えるのだろう。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《54号室の女船客》、1896年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵

同展は、館のコレクションに、フランス国立図書館から借用した版画も加えた136点のロートレック作品を、この「不在」と「存在」という視点から、改めて見直す興味深い試みとなる。一方、カルは、自身や家族の死にまつわる作品をはじめ、テキストと写真を融合して構成した代表的なシリーズを出品する。また、同館が誇るルドンの大作《グラン・ブーケ(大きな花束)》に着想を得たカルが2020年に制作した作品が、ついに今回初公開される。19世紀末の画家と21世紀のアートシーンを牽引する作家、ふたりの競演が楽しみだ。

<開催概要>
「再開館記念『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」

会期:2024年11月23日(土)~ 2025年1月26日(日)
会場:三菱一号館美術館
時間:10:00~18:00、金曜と会期最終週平日、第2水曜は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(11月25日、12月30日、1月13日、1月20日は開館)、12月31日(火)、1月1日(水)
料金:一般2,300円、大学1,300円、高校1,000円

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